SAWデバイス用途で開発していたAlN薄膜が滅菌/ウイルス除去用DUVLEDの基板作成技術に採用され、既存の工法に比べて安価で量産性に優れた代替技術としてDUVLEDの改善に貢献しています。
神港精機では半導体/電子部品分野での研究用/量産用の多数の実績からの提案に加え、実績装置と同様の環境でのテストが可能なデモ機を保有しております。
コロナの影響を受けて、世界的にDUVLEDは注目されています。また技術的に省エネ用パワーデバイスと共通する事もあり、期待値の高い開発分野です。
衛生的な水の不足、滅菌/ウイルス除去など健康に関わる課題に対し『AlNスパッタ技術』を紹介致します。具体的には、コロナ禍で滅菌/ウイルス除去に期待されるDUVLED(深紫外線LED)の性能向上/低価格化の提案で、神港精機の先端技術への貢献を紹介します。
DUVLED(Deep UV LED)は深紫外線を発するLEDで、波長が350nmより短い光が菌やウイルスを分解します。下水処理で水銀灯が使われていますが、水銀はRoHS規制対象であり、環境負荷低減や長寿命化に貢献するのがDUVLEDです。DUVLEDの発光層AlGaN(アルミガリウムナイトライド)は結晶性多層膜で、高い結晶性には下地の結晶性が必須です。そこで下地に結晶性AlN(アルミナイトライド)が使われますが、既存製法(熱CVD:Chemical Vapor Deposition)は高品質な膜に優位な製法であるものの毒ガス使用/高額/長い処理時間など問題がありました。
話は少し遡り、スマートフォンが普及し始めた頃、音声と電力を変換するSAW(Suface acoustic wave)デバイスが採用され始めました。材質に圧電特性(圧力と電力が変換される特性)のAlN膜が使われましたが、特性を得るには良好な膜質が必要でした。当社では多くのメーカー様から引合を頂きAlN成膜を開発した下地もあり、DUVLED用AlN基板作製技術に採用され、企業や研究機関に試作成膜を開始しました。
神港精機では元々開発していた技術をベースに、AlNスパッタリングを行います。スパッタリングとは清浄な真空状態(100分の1Pa台程度)でアルミと窒素を反応させて成膜する技術で、神港精機独自のスパッタリング技術で既存製法の熱CVDに比べ、安価/安全/短時間での製法を提案します。
AlN基板作製技術の既存製法(熱CVD)の結晶成長工程は処理時間が長い事に加え、毒ガスを利用するため、費用も高額です。この問題を神港精機はスパッタで解決します。神港精機のAlNスパッタでは安全な材料を使い、処理時間も短く、装置費用も大幅に安価になります。
このようにAlNスパッタは多くの利点を得られる技術ですが、試作を始めてDUVLED用AlN成膜が如何に高い技術レベルを要するかよく分かりました。膨大な水準で処理し最適値を探すのは一筋縄ではなく、結果が出る頃には取組んだ事自体がノウハウとなっていました。成膜データは実験に協力頂いた関係者の努力で得られた成果だと思います。難易度の高い一連の試作により、小型機と大型装置での成膜条件を確立しました。神港精機の装置群は小型機~量産機まで内部機構は一貫したデザインで、デモの状況を導入装置で容易に再現できます。これにより実験データの共有や、装置導入期間短縮が出来ます。またデモ機に加えて当社装置を持つファンドリーもあるので、同一設計の装置が多数ある事でトラブル時の協力が容易です。AlN成膜もデモ機/実績機は同仕様で、デモ機と同じ成膜環境を小型機~量産機まで実績から提案でき、お客様の条件模索にも蓄積したデータで貢献します。また薄膜以外にプラズマや熱処理を組合わせて複合装置やロボット搬送/巻取成膜の提案/テスト対応も可能です。
このように処理条件確立/装置ラインナップ拡充/開発デモ協力等の整備が出来ており、AlNスパッタを導入する際の不安を払拭する協力体制を整えております。会社としてもこのような取組から、技術開発の下地が鍛えられると考え、意識して挑戦しています。
コロナが蔓延し、滅菌/ウイルス除去の方法としてDUVLEDは注目されました。地下鉄を除菌する試みや空清に乗せる試み等の採用が進む一方で、素子の性能向上や低価格化は問題山積です。これまで光取出し効率や製造コストの課題から、需要も伸び悩みましたが、コロナ禍を受けての需要増や公的予算の割当てで開発促進される事が期待されます。
今回紹介したAlNスパッタ技術はDUVLED以外にも圧電特性や半導体特性からGaN(ガリウムナイトライド)やSiC(シリコンカーバイド)など省エネ次世代材料として注目され、神港精機としてもDUVLED用途を軸にその他の需要に対する社内研究も進める予定です。
業界展望としては空清/除菌用途でのDUVLEDの開発促進に加え、GaN/SiCなど電流制御用パワーデバイス増加などが当社のAlNスパッタの採用検討の後押しになると考えております。
神港精機が保有するAlNスパッタ技術は、DUVLEDが今後量産の際、低価格化や品質向上に寄与する技術で既に実績から提案可能な事から、情勢に注意して業界へのPRを進めて行きたく考えております。また神港精機は真空/プラズマ/熱の技術を持ち、それらを複合して他にも技術開発をしています。EV/PHV用パワーデバイスの真空リフロー技術、次世代航空エンジン材料SiC繊維の巻取成膜、半導体部品用の耐プラズマ性Y2O3成膜、次世代電池用の導電性CNx成膜など様々な先端技術でさらなる社会貢献をしていきます。
住所 |
6500038 神戸市中央区西町35番地 三井神戸ビル4F |
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創業 | 1949年01月24日 |
設立 | 1949年01月24日 |
売上 | 5,000,000,000円 |
資本金 | 375,000,000円 |
従業員数 | 100-500名(2020年10月20日現在) |